2010/12/29
今年読んで得したと思ったノンフィクション本ランキング10
2010年をふり返ってみて読んだノンフィクション書籍の中で、TOP10を選んでみました。
読みにくいもの、難しすぎて読めないものは完全排除していますので、今日紹介するどれもかれも分かりやすく、且つ内容の濃いものとなっています。
それではどうぞ。
第一位 技法以前-べてるの家のつくりかた
向谷地 生良
医学書院
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医学書院
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人に「援助」する本質。結果としての「つながり」。そして人への帰結。読破した直後、人への接し方が見えないところで変化しました。
本書は北海道(浦河)という小さな町で精神障害、統合失調症などを抱えた患者たちが暮らす福祉施設(社会福祉法人)「べてるの家」の内部的カラクリを暴露した虎の書である精神医学書です。
郡を抜いて一位です。
第二位 インビジブルハート―恋におちた経済学者
題名の「インビジブル・ハート」は、アダム・スミスの「神のインビジブル・ハンド」をもじったものであり、人々の利己的行動が、社会的に好ましい結果をもたらす市場メカニズムを示しています。
市場原理主義の目線から、鬼のように分かりやすい例題をもとにその原理の良さを教えてくれます。目からウロコが落ちる本と言っていいでしょう。
第三位 ブルー・セーター
ジャクリーン ノヴォグラッツ Jacqueline Novogratz
英治出版
売り上げランキング: 31452
英治出版
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著書の名前はジャクリーン・ノヴァグラッツ(女性)。
非営利ベンチャーキャピュタル「アキュメン・ファンド」の創立者であり、CEO。
このファンドの魅力というのが、「非営利」というところで、フィランソロピー(慈善活動)と融合し、寄付ではなくビジネスとして投資をしている事です。
投資先は途上国で、インド、パキスタン、ケニヤ、タンザニア、南アフリカなどで実績があり、現地で貧困層のために活動しているベンチャーに対して、集めた援助金で拡大と持続を主に出資をしています。
現在までに1,000万人以上の人々に基本的な社会サービスを提供し、20,000人以上の雇用を創出しています。
世界を良くしたい、貧困をなくしたいと思う人たちによる寄付金(意志あるお金)
そして、それを低所得者向けに活動する成功するかしないかも分からないベンチャーに、見返りが少ない可能性を認識しつつ、長期にわたって投資をする(忍耐強い投資 Patient Capital)で成果を上げ今尚、精進しています。
人の尊厳を重視した誰もが自分自身の人生を生きられる世界をと考え行動しているのが、「アキュメン・ファンド」であり、その壮絶なる道のり、半生を書きしるしたのが本書なのです。
第四位 なぜ人は砂漠で溺死するのか?
中学生でも分かる、健康な人が突然お風呂場で溺死するカラクリの元になった本です。
著者は年間300体以上の不審死を解剖する日本でも5本の指に入る優秀な法医学者です。
自殺したい人は読むべき本と言わざるえないくらいリアルに死と生の物的本質をついています。
第五位 言葉はなぜ生まれたのか
動物は「鳴き声」を出せるけれど、「言葉」を話すことはできません。
なぜ人間だけが言葉をすらすらと話す事ができるのか?
もうワケが分からない世界です。だから読むしかないでしょう。
ちなみに、本書は薄っぺらい絵本になっているので10分くらいで読めます。子供向け用
第六位 ペニシリンはクシャミが生んだ大発見
百島 祐貴
平凡社
売り上げランキング: 118836
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これを読むと、医者が神様でも魔法使いでもなくただの人間だということがはっきりと分かります。
体温測定や脈拍診断、血圧測定といった当たり前の診断が手にとるようにカラクリが理解できる。
医学書といっても専門書でもなく、雑学的なものでもなく、幅広く中和された笑える本となっています。
第七位 国際貢献のウソ
以下、本書引用。
こうして見ると、NGOって、かなりあくどい中間業者のように見えます。僕が見る限り被援助者というのは権利意識も何も持ち得ないくらい知能的にも劣った人たちだ、というイメージを暗につくりたがるようです。
その典型的な例が、「魚を与えるより魚のとり方を教えることは大切なのだ」という言い方です。
端的にいえば、発展途上国は援助依存体質が染み付いてしまっているから、自立させねばならんという考えですね。
勘違いもはなはだしいんですが、途上国の人々は、我々よりもはるかによく魚のとり方を知っています。
自分たちで自宅を建設したり修理したり、コミュニティで共同して集会所なんかも自前で建設する。僕たちはNGOに言われなくたってです。
~
「魚を与えるのがいけない」と言うことほど、現地の人の意思と可能性を蹂躙(じゅうりん)している言い方はありません。だって一時的にでも魚をもらうことで、それでおなかが膨れて、自分の力で勉強し、人生を切り開く個人が出てくるかもしれない。個人の可能性ってそういうものでしょう。
~
援助を受ける側の人たちの可能性と自由を僕たちの側が自立みたいな言葉でがんじがらめにするのは、非常に傲慢なことだと思います。僕が彼らの立場だったら、ふざけるなと言いたい。現地の人にとっては外国のNGOとの接触なんか、彼らの長い人生の中ではほんの短いものでしかない。そんなやつらに人生いかに生きるかまで言及されたくないはずです。
第八位 日本の聖域
もくじをみれば読みたくなるでしょうよ。
[目次]
【第一部】 欲望が生み出す闇
- 入国管理局 知られざる光と影
- 諮問機関委員 「肩書コレクター」の玩具
- 生保「総代会」 こんな「お手盛り」がなぜ許されているのか
- 「人工透析ビジネス」の内幕 患者は病院で作られている
- パチンコ業界 警察利権としての三十兆円産業
- 原子力安全・保安院 経産省はなぜ分離独立を認めないのか
- 厚労省の犯罪「ドラッグラグ」 助かる病人を殺している
- 創価学会エリート官僚 「池田御輿」をかつぐ高学歴集団
- 児童相談所 「父親による虐待」が問題化しないのはなぜか
【第二部】 とがめる者なき無為無策
- 日本最大の機関投資家「農林中金」 サブプライム汚染どこまで
- 学生のいない学校「国連大学」 外務省の裏金作りの道具に
- 国営「穀潰し」独立行政法人 これぞ「改革偽装」の典型
- 都立松沢病院 荒廃する「精神科の総本山」
- 東京高等裁判所 検察べったりの「官僚司法の砦」
- 国立大学「法人化」の内幕 「東大+α」以外はなくてもよい
- 二千七百万匹「ペット市場」の実態 毎年三十万匹が「処分」されている
- 日本銀行 問われる「経営の健全性」
- 無きに等しい「検屍制度」 見逃される殺人事件
【第三部】 国民への背信行為は続く
- -厚労省「医系技官」 医療荒廃の罪深き元凶
- 瀕死の「国立がんセンター」 厚労官僚が「倒産の危機」に追い込む
- 食品安全委員会 役立たず「農水省の植民地」
- 日本相撲協会 何から何までカネカネカネ
- 企業監査役 海外投資家から不信の目
- NHK 指導者不在のメディア帝国
- 交通安全協会 「警察一家」極めつけの利権
- 精神鑑定の世界 これでも日本は法治国家か
第九位 ニワトリ 愛を独り占めにした鳥
遠藤秀紀
光文社
売り上げランキング: 115707
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空気のように毎日毎日食している「卵」や「鶏肉」、その正体を改めて考えるとニワトリという鳥類に到達する。
改めて考えないと到達しない程当たり前のように人間世界と融合しているニワトリという白い鳥。
著者はそれを「愛を独り占めにした鳥」と表現している。それは8000年という歴史を通して人とニワトリが培ってきた賜物なのだろう。現時点での総数は世界で約110億羽、日本で3億5000万羽。
数多いる鳥類の中でなぜニワトリがこれ程まで普及したのか。そんな誰も関心のない事を、歴史学、解剖学、分子遺伝子などから紐解いたのが遠藤氏の新著「ニワトリ 愛を独り占めにした鳥」なのです。
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